伝送システム・ユニバーサルラインの信頼性について
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1. 伝送信頼性の関連する要素
省配線で多くの信号を送る多重伝送の信頼性について考える時に関連する重要なポイントは下記のように多くの項目があります。
① 信号を送る元の機器
各種センサ、スイッチ、機器等のリレー接点、トランジスタ出力
② 伝送入力部(伝送子機)
複数の入力のON/OFFのパラレル情報をシリアル情報に変換する部分とその信号を伝送ラインの最終端まで確実に届くような状態にして送り出す部分
③ 伝送ライン
伝送信号を減衰なく伝送出力ユニットまで送る部分
④ 伝送出力部(伝送子機)
伝送ラインより受け取った歪やノイズの混入した信号を波形整形する部分と送られてきたシリアル情報をパラレルに変換する部分と外部リレードライブできるような増幅回路
⑤ 出力対象機器
リレー、シーケンサ、ランプ、ブザーの機器で入力信号を利用、表示等する部分
⑥ 伝送基本システム(伝送親機)
時分割多重伝送の同期、指揮を取りノイズ等の不要電圧を抑制する部分
⑦ ノイズレベルと耐ノイズ性
伝送システムに影響を与える可能性のある近隣の機器、環境のノイズ電圧レベル、ノイズ 電力レベル、静電結合と電磁結合の度合い。伝送ユニット側のノイズ遮蔽部、ノイズ吸収抑制回路
⑧ 経年劣化
ダイナミックに変化する信号の伝達加工処理をするユニット内の各デバイスの寿命及び繰り返し処理や発熱による内部定数の変化、機能低下の程度と連続使用時間との要因
ユニバーサルラインはこれらの項目の①と⑤以外のすべてについて長期間安定して信号伝送するために、長い時間をかけて徐々に現場でのノウハウを蓄積しながら構築したシステムです。上記の項目の中には伝送に限らず一般的配線(ぞろ引き配線方式)でも重要な要素も含まれています。
2. ぞろ引き配線方式(個別パラレル配線)と多重伝送方式の違い
一般に多重伝送を使用しないぞろ引き配線方法の場合でも長距離の場合、電圧降下やノイズによる誤動作や静電容量分による交流機器の制御不能や過度現象、あるいは地電位の違いによる影響等の短距離では見られなかった想定外の現象が多くあります。
数Kmを越す長距離の場合は用途にもよりますが、なにも処理をしないぞろ引き配線方法よりもあらかじめ長距離の各種の阻害要因を考慮した伝送方式のほうが有利な場合もあります。(例えば数mVのアナログ信号の伝送等)
いずれにしても長距離の信号伝送は基本的な伝送線としての問題、電線の断線と絶縁低下と電圧降下は特に重要です。この電線の断線と絶縁低下と電圧降下の内のいずれかがだめな場合、短距離のぞろ引き配線の場合でもシステムとしての信頼性を欠く事になり、当然ながら使用できません。
また、長距離伝送の場合にこれらの阻害要因は相乗効果的に影響が現れます。
これらの信号伝送の阻害要因は、ぞろ引き配線でもユニバーサルラインを使用した多重伝送でも同様です。予備の古い配線等を使用する場合、ケーブルの敷設箇所全般に渡ってのチェックと絶縁、線間容量の測定が必要です。
3. ユニバーサルラインの耐ノイズ性
ユニバーサルラインの時分割多重伝送は1周期を32~256に分割して信号伝送しています。その伝送に使用しているクロックは端末に電源を供給できる能力を持ったインピーダンスの低いパワークロックと呼んでいる、信号幅1mS、+側波高24V、-側波高10Vのパワフルなクロックです。
ユニバーサルラインはこれらの低インピーダンス、パワークロック、広い信号幅のために耐ノイズ性能が他のメタル系伝送のいずれに比較しても強くなっています。
例えばAC220V三相電源のR,S相を伝送ラインと同一のケーブル内で密接した状態で1Km伝送してもエラーが起こりません。具体的な高ノイズレベルの現場では、6600Vの高圧ケーブルと6Km平行配線したトンネルの工事現場等があります。
この現場は大手の電機メーカーの伝送を使用して約500mで使用できなくなり、急遽ユニバーサルラインが採用されたものです。この他にも耐ノイズ性を発揮した現場は、東京電力50万V電力設備の監視、台湾新幹線やJR東海の新幹線の全変電所の監視用(OEM製作)に使われています。
耐ノイズ性及び耐雷性は長期間使用されている屋外や広域な各施設の納入現場で実証されています。
4. 長期の経年変化について
ユニバーサルラインは長期運用と互換性を基本として設計しています。このため使用する部品については経年変化の少ない、余裕のある定格の部品を採用しています。
特に比較的寿命の短いとされている電解コンデンサも必要容量の約5倍のものを採用しています。納入した工場で15年近く連続で稼動している物件のコンデンサの充放電状況を調べましたが、まだかなり余裕のある内容でした。抵抗の発熱設計にしても余裕のあるW数を採用しています。
またCPUのクロックについてもできるだけ低い周波数のクロックを使用して消費電力と発熱を抑えています。この低消費電力については長距離伝送をする際にも有効に効いています。
5. 平均故障間隔【MTBF】について
弊社の伝送システムに使用している各ユニットの平均故障間隔は、可動部の無い機器構成と余裕のある常数設定で設計しているため非常に長時間になっています。連続使用している施工例の中で伝送主ユニットと伝送端末のAD1、AD2のユニット100台を使用し17年連続稼動しているシステムがありますので、対外的にはそれを参考にMTBFを計算しています。
100点x24時間x365日x17年=14,892,000時間
この間にユニットが故障したのは3台です。
14,892,000/3=49,644,000時間
この故障も2台は強烈な直撃雷によるものです。
このような現場が各地にあり状況はこの現場とほぼ同一です。このような理由で弊社の伝送ユニットのMTBFは余裕をみて100万時間以上とさせてい頂いています。なお当時のシステムの信号形態はB接仕様が多く、0.5秒ごとにシステムOKの信号を休み無く伝送主局に対して送り続けているシステムです。
17年間の連続使用のセンサ信号の伝送回数
3,600秒×1/0.5×24時間×365日×17年=1,072,224,000
約100点のセンサがそれぞれ約10億回伝送主局の監視システムとキャッチボールをしていますがまだまだ健在です。
6. 接点系信号とアナログ系信号の信頼性
伝送システムとシーケンサやパソコン等を利用してセンサや設備や機器の監視、管理をする場合に現場から警報として上がる接点情報を監視するのが一般的ですが、この場合、センサ等の故障のために異常が起きても警報が上がらない場合があります。重要な管理ではこれらの接点系の信号のかわりに電圧、電流、温度等の変化するアナログ情報を取込み主装置側で警報設定することで、センサの状態監視を含めた信頼性の高い管理を行うことができます。ユニバーサルラインを使用するとローコストで可能になります。
例えばモータで起動するようなものであれば起動電流、起動時間、モータ温度、その時の関連要因である外気温の計測を同時に行うシステムとしたり、あるいは空調監視や機器過熱監視であれば異常接点信号の取り込みではなく、常時温度そのものを連続計測して監視することでシステム全体の管理が可能になります。更にアナログ値で計測管理する場合は警報監視だけではなく警報以前の予告警報の管理することができ、信頼性の高いシステムを構築することができます。
また、常時サンプリングしたデータはリアルタイムでグラフ表示することにより変化分の比較をしたり過度現象等の傾向を掴むことができるので、経年変化による重故障等もそれらの機器の異常の前にその兆候を事前に掴むことが可能になります。
別紙の資料は約3年間ロギングして自動的に生成されるグラフ表示によりエンジンの振動の異常を見つけたものです。
7. フェールセーフについて
弊社はもともと1976年に工場のFA化に関連する制御盤製作の会社としてスタートしました。当時は産業用ロボットの創成期でしたがそのころからロボットのインターフェースや関連の制御盤を製作していました。そのような関係で当時からフェールセーフの考え方は大手電機メーカー主導のもとに導入させて戴いています。誰がどのように操作しても安全側に、どのようなイレギュラ、 機器故障があっても安全側にと言うフェールセーフの考え方ですがこの考えが徹底しているはずの業界でも予期せぬ金属疲労による飛行機墜落、地震による原発の故障が起きています。
これらの状況を聞くたびにシステムが複雑になると、いくら個々の機器の安全性をフェールセーフ等の機構により高めても更に異なった観点からの全体管理をしないことには、複雑なシステムのパーフェクトな安全性の確保は難しいように感じられます。
また巷に多く溢れているコインパークの油圧レバーに子供が手を入れた時の想定や露出された回転式立駐の構造を見るたびに、フェールセーフの意識の欠如にハラハラすることがあります。ジェットコースタやエレベータの事故にしろコスト優先のためか気がつかなかったのかわかりませんが結果的にはことが起こってからの対応と法規制による対応が優先となっているようです。弊社のフェールセーフの基本的な考え方はできるだけ信頼度の高い方法で、ある程度時間がかかっても確実に動作させることです。更に有効なのは「シンプルイズベスト」です。これが重要と思っています。
「シンプルイズベスト」 これに勝るものはないと思っています。
ある程度の伝送速度を犠牲にすることにより伝送に於ける電子回路の回路構成と部品点数は劇的に減少します。簡単な回路、少ない部品点数、これが信頼性を上げる理由です。耐ノイズ処理もCPUを使用しない適切な常数のローパスフィルタも多用しています。これは通常はCPUが行う二重照合、三重照合を簡単な物理的回路で瞬時にしているようなものです。整合性を考慮した回路で部品が少ないのがMTBFを上げている要因です。シーケンサや光ファイバを使った伝送は何でもできるように太いパイプで大量に、しかも超高速で伝送していますが変換に変換を重ねた用途によっては、非常に無駄で複雑なシステムになっている場合があります。
勿論シンプルな回路のみでは使用できない演算する箇所は、CPU処理を行ってシステムの信頼性を高めています。
一般的な機械、システム等でもそうですがフェールセーフの処理は全体を見据えたを整合性のある処理をせずに闇雲に取り入れると非常に使いにくいシステムとなりますので現場、状況に合った考え方が必要になると思います。
8. 誤動作の可能性について
外来ノイズに非常に強いユニバーサルラインの機器は信号幅を広くして低インピーダンスでラインドライブされているため、近隣の電子機器、電力機器等の静電誘導や電磁誘導、高周波誘導等の特別なハイレベルのノイズ以外では誤動作が起こりません。通常の直接配線と同じ、場合によってはそれ以上の耐ノイズ特性です。しかし通常の制御リレー等の配線と同様で間違った配線をしたり異なった電圧を印加した場合はエラーが起こります。配線間違いについては工事完了後に配線チェックを行い、正確な結線工事を確認してから通電すれば問題は起こりません。
しかし、例えばAC100Vを伝送ラインに間違えて接続した場合、2線式ユニットの場合やあるいはCPUの搭載していないユニット(現行品ではAD1)の場合は、伝送ラインのショートと断線を連続的に繰り返した場合にはごく稀れにOFFであるはずの信号が0.5秒間だけONする場合が想定されます。このような伝送ラインが不安定になる可能性がある場合、安定した電源で動作する4線式のCPUを搭載したユニットをお使い下さい。
ユニバーサルラインは基本的にはブロードキャストに近い通信方法なので、アドレスさえ一致すればどのユニットとでも通信が可能でN:Nの便利な使い方ができます。この便利さが裏目に出てアドレス設定を間違えると想定外の機器と通信することになり、不要なビットをON/OFFすることがありますので設定には細心の注意が必要です。場合によっては単独1ビットのON/OFFを受け付けない16ビット照合ユニットをお使い下さい。設定変更やケーブル工事の追加の場合は必ず電源を切ってから行って下さい
9. 16ビット照合制御用ユニット
ユニバーサルラインのラインナップにはアドレス設定を間違えても特定の相手とだけ通信するユニットがあります。
仮にどれかのユニットが間違ってON等の信号を送っても、ID異常としてフェールセーフの考え方で安全側に動作するユニットです。
このユニットは1ビットのON/OF信号でも他の連続する7ビット、合計8ビットの信号の塊として伝送する方法です。
更に伝送ラインに乗せる時には本来の8ビットにそのビット内容のON/OFFを反転した8ビットを新たに追加して16ビットの情報として伝送しています。
受信側は受け取った16ビットを二つの8ビットに分けて後半8ビットのONとOFFを反転します。
この反転した8ビットのON/OFFと前半の8ビットのON/OFFが一致した時のみ受信したON/OFF情報を出力します。受信したデータの前半と後半が一致しない時はユニットはシステム上の安全側(オールOFFもしくはオールON デフォルトはオールOFF)の状態になります。
例えば先頭ビットと3番目のビットがONの場合の伝送の場合( ●=ON ○=OFF )
送信側の8ビット入力情報 |
---|
●○●○○○○○ |
↓↓↓↓↓
16ビットで送信 (反転した8ビット追加) |
---|
●○●○○○○+○●○●●●●● |
↓↓↓↓↓
正常受信時 | 異常受信時(A接仕様) | 異常受信時(B接仕様) |
---|---|---|
●○●○○○○○ | ○○○○○○○○ | ●●●●●●●● |
異常受信時=反転照合が一致しない場合
このユニットは照合用に8ビット余分に使用しますので、1ラインで使用できるI/O点数は256点以下になります。
10. 16ビット照合制御用ユニットのエラーの確率
ユニバーサルラインのクロックは500Hzで50%Dutyのクロックですので、1mS幅のON/OFFです。
この16ビット照合のユニットで意識的にエラーを出す条件を作るには、以下の条件がすべて揃えば不要ビットがONもしくはOFFになりますが、実際はまず不可能と考えられます。
・印加するノイズ源に5V以上の正確な1mS幅のONかOFFの状態が必要
-----確率不明、誘導によるノイズで5Vと正確な1mS幅は不可能に近い
・その状態を合計32回(HとLで2回x16ビット)連続して出すことが必要
-----確率不明、不可能に近い
・さらに本来の正常データと論理ORを取った状態の16ビットのONとOFFのパターンの前半と後半を反転されたものが同一であること
-----確率 1/65536
・上記のパターンが伝送リセットと同期していること
-----確率 32/1000≒1/31
11. システムとしての信頼性向上
フェールセーフで安全側に動作する時に一般の機械のような場合は、異常時に停止することが安全であることが多々あります。
例えばロボットの非常停止の押しボタン回路は正常時道通のB接で構成されており、仮に操作ボックスのケーブルが切れてもロボットは止まるようになっています。この考え方は防犯系にも採用されており、泥棒がケーブルを切ると警報が上がるようになっています。
制御系の場合は安全側の動作がONの時もあります。
例えば重要な照明や給水ポンプ、排気ファンのようにONや運転が安全側 の場合も多いものです。また非常扉の制御などでは停電の場合に中の人を逃がすアンロック優先にする場合と泥棒対策では逆のロック優先などの場合もあり状況に応じたON優先/OFF優先のシステムの構築が必要です。
さらに重要なものについては異常が起こりフェールセーフで安全側に動作したとしても、その異常の状態が即座に操作制御側に分かることが必要です。
制御系のシステムについては動作のアンサーバックが必要になります。
そのアンサーバックについては、例えば遠隔のポンプ起動の場合の動作確認として現場の電磁開閉器のONの確認ではなく、モータへの電圧印加確認、あるいはポンプの正常回転確認、さらに言えばポンプ出口の水量の確認等のようにできるだけ目的の最終情報のアンサーバックが必要です。
伝送系で言えば下記のような構成になります。
12. システムチェックについて
システムの信頼性を向上させるため、フェールセーフの考え方は非常に重要です。さらなる信頼性の向上には全体でのシステムチェックも必要です。
例えば、いざ操作する時になってケーブルが断線していたら話になりません。長期間の長距離伝送ではいろいろなことが起こります。現場で警報が発生しても伝わりません。あるいは現場のブレーカがトリップしていても同様です。
ユニバーサルラインではケーブルの断線対策と現場機器の動作確認のため、前述の常時ONのB接伝送をよく使用します。ケーブルや端末電源監視用にアドレスを1つ使用して、終端に設置した入力ユニット等の入力を常時ON状態にして、その信号を反対側で受けて監視します。
パソコン等を使用する複合的なシステムの場合、パソコン等から生成する全体システムチェック用に常に一定周期でON/OFF信号を1つ用意し、専用のアドレスを設け伝送経由で全体をチェックします。信号はパソコンから伝送主ユニット経由で、外部端末の純ハード的なリトリガブルタイマに定期的にON/OFF信号を送り、常時起動しておきます。このタイマの接点をブザーやランプ等のパソコンとは別の装置で常時監視することで、パソコンのフリーズも含めた全体システムの監視が可能になります。
さらにパソコンを安定して夜間無人で使用するため、定期自動再起動のソフトを組み込み長期運用しています。これらの方法を採用して黎明期の不安定なウィンドウズパソコンで24時間・365日・5年間以上、各地で監視用に運用しています。
またシステム異常の即時通報をするため、メールを飛ばしたり、リトリガブルタイマの接点で別の電話回線による警報通報しているシステムもあります。更に通報装置が故障した時の対策として、システムにより1日に一回あるいは1時間に一回「正常動作です」とかの通報や、その時点のアナログ計測値を送り、その信号が途絶えたら異常としているシステムもあります。
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